福祉施設版ニュースレター2025年5月号
2025.05.08【主な内容】
◆テクノロジー導入、2025 年度の支援策
◆高年齢労働者に対する労働災害防止対策の取組状況
◆福祉施設でみられる人事労務Q&A 『通勤手当を支給する際に考えておきたいルール』
◆今月の接遇ワンポイント情報『生産性を上げるには』
>>ニュースペーパーはこちらからダウンロードできます
※ダウンロードにはパスワードが必要です。
テクノロジー導入、2025 年度の支援策
今年度は報酬改定のない年。次期改定を見据えた最優先課題はICT 化です。取組の中核となる補助金(介護テクノロジー導入支援事業)は、単なる機器導入の財政支援から、組織的な業務改革を前提とした制度設計に移行しています。
業務改善・人材定着まで含んだ計画を
この補助金は、生産性向上と人材不足対策として、介護ロボットやICT 機器などのテクノロジー導入を支援するものです。
2023 年度までの
①介護ロボット導入支援事業
②ICT 導入支援事業
を統合・拡充して、2024 年度に開始されました。
2022 年度の実績は、①が2,930 件、②が5,075 事業所と、多数の事業者が利用している補助金となります。
今年度の予算規模は前年度と同程度ですが、いくつか変更点があります。ここでは大きな変更点を2 つご案内します。
● 介護ロボットの補助対象に3分野が追加
以下の3 分野が加わり、従来の6 分野13 項目から、9 分野16 項目へ拡大されました。
○ 機能訓練支援
介護職等が行う身体機能や生活機能の訓練における各業務(アセスメント・計画作成・訓練実施)を支援する機器・システム
○ 食事・栄養管理支援
高齢者等の食事・栄養管理に関する周辺業務を支援する機器・システム
○ 認知症生活支援・認知症ケア支援
認知機能が低下した高齢者等の自立した日常生活または個別ケアを支援する機器・システム
● 補助要件、新たに2 つ追加
補助を受けるための要件は次のとおりです。2.と3.が新たに追加された要件です。
1. 介護ロボットのパッケージ導入モデル、ガイドライン等を参考に、課題を抽出し、生産性向上に資する業務改善計画を提出の上、一定の期間、効果を確認できるまで報告すること
2. 第三者による業務改善支援又は研修・相談等による支援を受けること
3. (入所・泊まり・居住系)利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会を設置すること
2.はサービス事業や規模の大小にかかわりなく、すべての事業者に求められる要件です。
3.の委員会は、2024 年度介護報酬改定により、短期入所系、居住系、施設系サービスに対し2027 年3 月末までの設置が義務付けられていますが、この補助金を受ける場合には、早期の設置が求められるということになります。
このように、従来の量的支援から、「質的な活用促進+職場改革」へと重点が移っていることが、今年度の特徴として挙げられます。
なお、都道府県ごとに申請条件や補助額、受付期間が異なります。各都道府県のWeb サイト等でご確認ください。
高年齢労働者に対する労働災害防止対策の取組状況
ここでは今年2 月に発表された調査結果 から、福祉施設等(以下、医療,福祉)における、高年齢労働者に対する労働災害防止対策の取組状況をみていきます。
9 割の事業所に 60 歳以上の労働者が
上記調査結果によると、60 歳以上の高年齢労働者が業務に従事している医療,福祉の事業所は88.7%で、調査結果全体の77.7%より高くなっています。
また、高年齢労働者に対する労働災害防止対策に取り組んでいる医療,福祉の事業所は56.5%で、全体の54.7%より1.8 ポイント高い状況です。
労働災害防止対策の取組内容
労働災害防止対策に取り組んでいる事業所での取組内容をまとめると、下のとおりです。
医療,福祉では、高年齢労働者の特性を考慮した作業管理が64.8%となりました。次いで、個々の高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応が42.1%となっています。
取り組んでいない事業所は4 割以上に
同調査結果から、医療,福祉の4 割以上の事業所では労働災害防止対策に取り組んでいません。その理由として、取り組み方がわからないが49.2%、自社の60 歳以上の高年齢労働者は健康であるが42.9%などとなっています。
厚生労働省では、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」という、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境の実現に向け、事業者や労働者に取組が求めら
れる事項をまとめた資料を策定しています。
取り組み方がわからない施設では、こうした資料の活用も検討してはいかがでしょうか。
加齢に伴う労働災害は、身体への負担が少ない業種でも発生のリスクが高まります。自施設の状況を確かめ、適切に対応していくことが必要です。