外国人雇用が当たり前になる?!
2023.04.10 人事労務(採用)経営情報技能実習「廃止」提言へ 政府会議、外国人材確保に転換
「外国人の日本での労働のあり方を検討する政府の有識者会議は10日、いまの技能実習制度の廃止を求める提言の試案をまとめた。途上国への技術移転という目的と実態が乖離(かいり)していると強調し、新制度の創設を訴えた。主要な受け入れ制度の一つが導入30年で転換する」。
「技能実習は1993年に始まった。耕種農業や機械加工など87の職種で外国人を雇用できる。2022年12月時点で32万5千人ほどが働き、日本への滞在を最長5年で認めている。」
「技能実習は廃止すべきだと踏み込み、人材確保と人材育成の双方を目的とした新しい制度に衣替えするよう提起した。」
参考資料:日経新聞「技能実習「廃止」提言へ 政府会議、外国人材確保に転換」20230410
技能実習生制度は、中小企業でも、農業・水産業、製造業などで広く導入されていますが、今回検討されている規制緩和により、よりいっそう外国人労働者の活用が進みそうです。というより、中小企業の経営は、もはや外国人労働者を使わずしては成り立たないともいえるでしょう。
日本における移民政策
これまで、日本政府は、「移民」と「外国人労働者」は別の者として区別してきました。
政府は2018年時点で、移民政策をとらないというスタンスを表明しています。ただし外国人労働者は受け入れる体制を作り、労働力の確保を政策として進めています。
ここで政府が示す「移民」とは国籍取得を前提とするものであり、在留期間を制限して、家族の帯同を基本的に認めないという姿勢をとっています。
あくまでも移民政策ではなく、外国人の人材を受け入れ、外国人労働力の確保を拡大するために、短期的な移住における在留資格を設けて対応するというものでした。
それに伴い、入国管理法(外国人労働者受け入れ拡大を目指す改正出入国管理法)では、2019年から新在留資格として特定技能と創設しました。これによると在留期間は1年、半年または4ヶ月ごとの更新、通算で上限5年までと短い期間での在留となっています。
技能水準は試験などで確認の上、満たしていれば在留資格を得られますが、居住している国で家族がいたとしてもその帯同は基本的に認めないという方針は変わっていません。
つまり、あくまで外国人労働者を受け入れているだけであり、移民の受け入れは行わないという考えの下、政策を進めてきました。
なぜ日本は移民政策を行わないのか
海外では移民を受け入れる国それぞれに移民政策があり、法整備などを進めています。
一方で日本は移民の受け入れは行わず、外国人労働者を受け入れているだけであるというスタンスを貫いています。それではなぜ移民を受け入れず、移民政策を行わないのでしょうか。
それは日本における行政の縦割り構造が要因にあると考えられています。法務省では、外国人を管理の対象としているのですが、これは入国管理法などにより、外国人が日本で不法行為を働いた際に監督責任を問われるのが同省であるためです。
また厚生労働省では移民の流入により、国内労働者が締め出され、社会保障費の増加が起こると危惧しており、どちらの省も移民政策による外国人の大量流入には消極的です。
一方で、経済産業省は日本の競争力強化を図るためにも、労働力として、あるいは専門職に就く外国人労働者の受け入れには積極的な取り組みを見せています。
ほかにも関係省庁の思惑が絡み合いますが、このように移民政策は多面的な要素を持ち合わせており、他分野にまたがる問題でもあることから、担当部署の利害調整を行うと、どうしても全体像を描くことが難しいのです。
しかし、現実問題として日本の人口は減少が進み、労働力不足にも陥ろうとしています。そのような状況を続けていけば、現状の規模のGDP(国内総生産)は維持できなくなり、労働生産性を伸ばすことができなくなるため、あくまで移民ではなく短期間の外国人労働者を受け入れるという考えに留まっています。
日本が外国人労働者を受け入れる理由
日本政府が外国人労働者の受け入れ体制を強化したのには理由があります。
2020年時点の日本は少子高齢社会であり、2008年に人口増加のピークを迎えて以降、減少の一途をたどっています。
ただ減少しているだけでなく、15~64歳の割合が大きく減少し、15歳未満の子どもも年々減少し続け、65歳以上が急激に増加しています。
これにより総人口に占める労働力人口の割合は、ほかの主要国と比較しても減少ペースが顕著に現れています。
日本の総人口に占める労働力人口の割合は60.1%であるのに対して、アメリカが62.8%、カナダが65.7%、ドイツが60.9%、イギリスが63.5%とどの国と比べても低くなっています。
人口減少と少子高齢化による国内各地での人手不足の顕在化は、需要の増加に対応しきれず、国内の経済成長を妨げる要因になっているのです。
実際に15歳以上の人口と労働力人口を見ても、2010年以降は15歳以上の人口が増加せず頭打ちとなり、労働力人口は2012年頃に一度減少し、そこから多少増加はしているものの、大きな伸びは見せていません。
今後さらなる高齢化が進むと予想される以上、労働力人口も減少かかろうじて変化しないという動きしかしないと考えられます。
国内の日本人で労働力を望めない以上、需要の増加に対応するためには、海外から労働者を受け入れるべきだと考えた政府は、外国人労働者の受け入れ拡大へと舵取りを行ったのです。
これにより2017年のデータではありますが、日本では127.9万人の外国人労働者が就労していることが分かっています。
そのうち、就労目的で在留が認められる人は約23.8万人、技能実習が約25.8万人、特定活動が約2.6万人であり、日本の生産業などを支えています。
今後の潮流
我が国の少子高齢化・労働力人口の減少という社会構造が変わらない以上、国力・経済力を維持するためには、移民の受け入れしかありません。アメリカやオーストラリアなどの外国も、積極的に移民を受け入れることで、高い経済成長を実現しています。
日本の国自体も、多くの移民に来てもらえるように、魅力ある国づくりを進める必要があります。またそれは中小企業でも同じことがいえるかと思います。
『魅力ある会社づくり』=『成長する会社づくり』なのです。