求人の年齢制限が認められるケースとは?
2023.03.15 人事労務(採用)経営情報求人募集・採用時の年齢制限は原則NGです!
が、例外的に認められるケースも含め解説します。
求人募集をかける際、基本的に年齢を限定するような形で求人票を出すことは認められていません。しかし、長期的に働ける人材を獲得したい場合、若年者の採用を考える企業は多いはずです。
原則として、募集・採用における年齢制限は認められていませんが、年齢制限を設ける例外事由もいくつか存在します。
ただ、自社が欲しい人材を年齢に頼って採用することは、必ずしも最適解とは限りません。
この記事では、新しい求人を出すにあたり年齢制限を検討している人事担当者向けに、
・募集や採用時に年齢制限を設けてはいけない理由
・年齢制限が認められる例外事由6種類
・年齢制限にこだわらず希望の人材を集める方法
上記の内容について解説します。
求人情報や募集要項の多くに年齢が書かれていない理由
求人広告・募集要項の多くに年齢制限が設けられていないのは、法改正に伴うルール変更によるものです。
全国の事業者が採用にあたり注意しなければならないポイントのため、まずは理由を押さえておきましょう。
雇用対策法改正に伴い、年齢制限の禁止が義務化された
2007年10月1日、改正雇用対策法が施行されたことにより、募集・採用にあたり年齢制限を設けることはできなくなりました。
改正前まで年齢制限は努力義務となっていましたが、高年齢者・年長フリーター等の一部労働者が応募機会を得られずにいる状況が続いていたことから、国が法改正に踏み切ったという背景があります。
求人記事や募集要項に年齢制限と読み取れる内容が記載されていた場合、直ちに企業が罰則を適用されることはありませんが、行政指導等の対象となるおそれがあります。
もっとも、即戦力を求めて「経験者歓迎」とアピールする求人広告も転職市場では少なくないことから、年齢を問わず「働いてくれる人材を幅広い年代から確保したい」と考えている事業者は多いものと推察されます。
遅かれ早かれ、年齢制限は転職市場から撤廃される流れだったのかもしれません。
年齢制限を設けないことによる企業側のメリット
年齢制限を設けずに人材を採用することで、企業側にも一定のメリットが期待できます。
具体的には、主に以下のようなものがあげられます。
①応募者数が増える
最終的な採用人数が何名だったとしても、応募者数が増えてくれることは、応募者0に比べれば大きな収穫です。
年齢というフィルタを設けていない分、これまで見逃していたタイプの人材に出会える可能性もありますから、これまで想定していなかった選択肢を増やすことにもつながります。
②欲しい人材の本質が明確になる
年齢は、大まかに人材の特徴や能力・スキルを判別するのに利用できる情報という反面、あまりにも対象者が広過ぎて「自社で本当に欲しい人材像」からかけ離れてしまうリスクもあります。
応募する仕事内容が体力勝負の仕事だったとして、必ずしも若年者だけが体力をアピールできるとは限りませんし、想定年齢以上の応募者でも実務経験でカバーできる部分は多分にあるはずです。
年齢という条件を取り払うことで、欲しい人材の本質が明確になれば、年齢ではなく筋力や柔軟性などを募集要項に書き加えることになるでしょう。
他にも、例えば営業能力など、本来応募者に期待していなかった部分を補ってくれる人材に出会えたとしたら、それは企業にとってメリット以外の何物でもないはずです。
③年功序列にこだわらない採用ができる
スタッフの年齢が若く、社内ノウハウが十分に確立していない中に、あえて経験者・中高年者を採用することで職場を引き締める結果につながるかもしれません。
一概には言えませんが、年下の部下と折り合いをつけて働ける年上の部下は、職場問わず貴重な存在です。
募集対象年齢を間接的に伝えることはNGではない
自社の求人につき、募集対象年齢を募集要項に掲載することは認められません。
しかし、まったく年齢を表に出してはいけない、というわけではありません。
表現を工夫することで、間接的に希望する年齢層を伝えているケースは多く見られます。
具体的には「社員の7割が20代後半」や「脂ののった30代が活躍する職場です」といったイメージです。
ただ、過剰な表現に至った場合、やはり求職者に誤解を与えるおそれがあります。職場の多様性を確保する意味でも、募集対象年齢を極端に絞らない方が賢明です。
求人の年齢制限が例外的に認められるケースとは
原則として認められない求人の年齢制限ですが、一部例外的に認められるケースもあります。
以下にお伝えする6つの事由が対象で、雇用対策法施行規則によって条件が細かく定められているため、それぞれ確認していきましょう。
1.定年の年齢を上限として募集するケース(例外事由1号)
2.労働基準法等の法律で年齢制限が設けられているケース(例外事由2号)
3.長期勤続によるキャリア形成を図る観点から若年者を募集するケース(例外事由3号 イ)
4.技能・ノウハウ継承の観点から特定の職種・年齢層を募集するケース(例外事由3号 ロ)
5.芸術・芸能の分野で特定の年齢の人材を募集するケース(例外事由3号 ハ)
6.60歳以上の高齢者、その他特定の年齢層の人材を雇用するケース(例外事由3号 ニ)
1.定年の年齢を上限として募集するケース(例外事由1号)
定年がある会社で仕事を募集している場合、かつ期間の定めのない労働契約を結ぶ場合は、定年年齢を上限として年齢制限が認められます。
一例として、定年が65歳の会社が65歳未満の人材を募集することは問題ありません。ただし、有期労働契約・定年以外の年齢を上限とすること・下限年齢を付している場合などはNGです。
2.労働基準法等の法律で年齢制限が設けられているケース(例外事由2号)
労働基準法やその他の法律において、特定の年齢層の就労が禁止・制限されている業務は、年齢制限が認められる例外事由に含まれます。
具体的には、労働基準法第62条で指定されている危険有害業務、警備業法第14条で定められている警備業務の制限等が該当し、満18歳未満の募集はできません。
3.長期勤続によるキャリア形成を図る観点から若年者を募集するケース(例外事由3号 イ)
例外事由3号のイは、新卒一括採用という雇用慣行の中、雇用情勢の悪化にともない希望する働き方ができなかった人を想定して設けられた例外事由です。
原則として35歳未満、概ね45歳未満までの年齢を想定していますが、他にも「業務経験を必要としない資格(普通自動車免許等)を持っている人で45歳未満」という条件で人材を募集することもできます。
注意点として、上限年齢を設ける場合は、以下の条件を満たす必要があります。
・対象者の職業経験について不問とすること
・新卒者以外の者について、新卒者と同等の処遇にすること
※(同等の処遇:新卒者と同様の訓練・育成体制、配置・処遇をもって育成することを指す)
※参照元:厚生労働省|年齢制限禁止パンフレット
採用者のキャリア形成を図ることを前提に認められる事由のため、原則として中途戦力の採用を目的に年齢制限を設けることはできない点に注意しましょう。
また、有期労働契約・下限年齢を付すことも認められません。
4.技能・ノウハウ継承の観点から特定の職種・年齢層を募集するケース(例外事由3号 ロ)
社内スタッフの年齢の偏りから、技術・ノウハウを継承しやすくするために特定の年齢層を募集する場合、一定の条件の下で年齢制限が認められます。
このケースでの年齢制限に関する注意点として、以下のようなルールが設けられていることがあげられます。
・特定の年齢層とは、30~49歳の中で、特定の5~10歳幅の年齢層が対象となる
・該当する年齢層と人数につき、その上下の年齢層と人数を比較した結果が「1/2以下」であれば、該当する年齢層に限定して募集可能
※参照元:厚生労働省|年齢制限禁止パンフレット
具体的な年齢層と人数のイメージをまとめると、以下のようになります。
年齢層①30~35歳→人数16人
年齢層②35~40歳(特定の年齢層)→人数5人※(①・③それぞれの人数の1/2以下)
年齢層③40~45歳→人数18人
そのため、募集年齢層が30~49歳の間におさまっていなかったり、対象の年齢幅が5~10歳を超えて募集されていたりする場合はNGです。
5.芸術・芸能の分野で特定の年齢の人材を募集するケース(例外事由3号 ハ)
俳優やモデルを採用する場合、表現上の都合から成人が子供の代役を務めることには限界がありますから、こちらも例外事由として認められます。
具体的には、演劇の子役を募集するケースなどが該当します。
しかし、芸術・芸能の分野に関係なく、特定の年齢層を対象とした商品・サービスの提供等を目的として年齢制限をかける場合はNGとなります。
6.60歳以上の高齢者、その他特定の年齢層の人材を雇用するケース(例外事由3号 ニ)
先にあげた例外事由の他、以下のケースでも例外事由が認められます。
・60歳以上の人を募集
・35歳以上55歳未満の人を募集(就職氷河期世代限定)
・60歳以上65歳未満の人を募集(特定求職者雇用開発助成金の対象者として)
総じて「特定の年齢層の雇用を促進する施策」の対象となる人材を採用する場合につき、例外事由が認められるものと考えておくと分かりやすいでしょう。
将来的に、国の方針によって対象者が増える可能性も考えられます。
年齢制限にこだわらず希望の人材を集めるためには
求人時に応募者の年齢を指定できない以上、企業としては年齢制限にこだわらない形で希望の人材を集める必要があります。
そのためには、募集要項の工夫も含め、複数の方法を検討することが効果的です。
求人記事・募集要項等を作成する際、求める人材像を詳細に反映する
書類選考もしくは応募を決定する段階から応募者をふるいにかける場合、求人記事・募集要項等の出来が重要です。
未経験者・経験者・国家資格取得者・管理職経験者など、求める条件次第で提供する情報は変わってくるため、本当に自社が求める人材像を詳細に反映する必要があります。
ポイントは、単純に自社で必要としているスキル・実務経験をまとめるのではなく、自社の情報を積極的に開示するスタンスで応募者をつのることです。
能力面だけでなく、他スタッフとの人間関係・社風とマッチするかどうかも重要ですから、自社の事情をすべて受け入れてくれた求職者だけが応募を志すような文章が理想です。
試用期間を設け、ミスマッチのリスクを最小限に抑える
事前に準備をして、しっかりと面接をした上で採用しても、応募書類とわずかなコミュニケーションだけでは、応募者の能力すべてを見極めるのは難しいでしょう。
そこで、試用期間を設けることで、本採用後のミスマッチを防ぐことができます。
ただ、あまりに試用期間が長いと、採用したスタッフにプレッシャーを与えてしまったり、長い試用期間を敬遠して辞退されてしまったりするリスクもあります。
業務内容によって適切な試用期間は異なりますが、概ね3ヵ月が一般的な基準と考えてよいでしょう。
人材紹介会社の活用を検討する
理想にこだわるなら、人材紹介会社を頼って希望の人材を探す方法もあります。
年齢イメージも含め、欲しい人材像を担当者に伝えることで、不特定多数の中から応募者を選別するよりも効率的に人材を探せます。
しかし、年齢層についてある程度希望を伝えられるとしても、極端に年齢にこだわらないよう注意が必要です。
本質的には、募集要項に合致する人材であれば応募資格はあるわけですから、年齢以外のファクターにも注目して人材を探すことが大切です。
【まとめ】
求職者にとって、年齢の壁は企業が思っている以上にシビアに感じられるものです。
求人記事に目を通して「チャンスがあるかもしれない」と思った矢先、募集要項の中に「20代が元気な会社です!」と書かれていただけでも、30代以降の年代はいったん見送りを検討するかもしれません。
人材獲得がますます困難になるなか、年齢にこだわらない採用活動を行うことは、もはや企業にとって避けられないものと考えるべきでしょう。
能力・適性にフォーカスして採用するノウハウを培うことが、採用担当者には求められているのです。