従業員の奨学金の返済を会社が負担した場合の税務上取り扱いについて
2023.03.15 人事労務(採用)税務情報経営情報【質問】従業員の奨学金の返済を、会社が負担してあげることはできますか?またその場合の税務上取り扱いについては?
【回答】
奨学金といっても、貸与型のものはあくまでも借金ですから、社会人になってから返済していく必要があります。でも社会人になったからといって、いきなり余裕ができるわけでもなく、奨学金の返済に苦しむ方も多いようです。社会問題にもなっているようですね。
このような奨学金の返済に困っている従業員がいる場合、会社として奨学金の返済を負担することが可能なのか?税務上の取り扱いはどうなっているのかについて調べてみました。
1.奨学金返還支援(代理返還)とは?
日本学生支援機構の貸与奨学金を受けていた社員に対し、企業が返還額の一部又は全部を機構に直接送金することにより支援すること。
2.本制度を利用する場合(企業から機構へ直接送金すること)の課税等の関係
①【所得税】非課税となり得ます。
返還者にとって、企業が直接機構に送金することで自身の通常の給与と返還額が区分され、かつ奨学金の返還であることが明確となるため、その返還額に係る所得税は非課税となり得ます。※返還者が役員である場合など一定の場合には、所得税の課税対象となることがあります。
②【法人税】給与として損金算入できるほか、「賃上げ促進税制」の対象になり得ます。
企業にとっては、代理返還は使用人の奨学金の返済に充てるための給付にあたるので、給与として損金算入されます。また、「賃上げ促進税制」の対象となる給与等の支給額にも該当することから、一定の要件を満たす場合には、法人税の税額控除の適用を受けることができます。
※賃上げ促進税制:雇用者全体の給与等支給額の増加額の最大30%(中小企業の場合40%)を税額控除(税額控除上限:法人税額又は所得税額の20%)
③【社会保険料】原則として、標準報酬月額の算定のもととなる報酬に含めません。
3.その他
本制度を利用又は利用予定の企業名及び返還支援要件等の情報を当機構HPに掲載するほか、大学等に紹介します。
【まとめ】
給与の一部を奨学金の返済に充てることで、従業員・企業双方にメリットがあります!
奨学金の返済を負担してくれる優しい会社ということで、採用PRにも繋がるかも!!
ぜひご検討ください。
参考文献:「企業の奨学金返還支援(代理返還)への対応」独立行政法人日本学生支援機構
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kigyoshien/__icsFiles/afieldfile/2022/09/06/kigyoushien5_1.pdf
20230314 企業の奨学金返還支援(代理返還)への対応 日本学生支援機構