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ニュースレター2025年3月号

2025.03.12 ニュースレター経営情報補助金・助成金

ニュースレター2025年3月号をお届けします!

【主な内容】
住宅ローン控除における「調書方式」とは
スポットワーカーは「国内雇用者」?
高年齢雇用継続給付 4月から支給率が下がります
中小企業の価格交渉・転嫁の状況
若年労働者の定着に最も効果のある対策

住宅ローン控除における「調書方式」とは

税制改正により、住宅ローン控除を適用する際の手続が改正されています。 その概要をご紹介します。

調書方式への移行

 令和4年度税制改正により、住宅ローン控除を適用する際の手続の簡便化として、年末の借入残高について、これまでの年末残高証明書を用いる「証明書方式」から、年末残高調書を用いる「調書方式」とされました。
ただし、債権者が「調書方式」に対応するためのシステム改修等への対応が困難な場合には、引き続き「証明書方式」とすることができる経過措置が設けられています。国税庁から公表されている、令和6年12月末現在において「調書方式」に対応した金融機関の公表数は、40行庫でした。

納税者側の手続

納税者が年末残高情報を取得するには、マイナポータルでの事前準備等が必要です。また適用2年目以降も年末残高情報を取得するには、初年度の確定申告時にe-Tax による控除証明書の交付を希望する必要があります。
なお、令和6年分の所得税等の申告等から適用となるため、事業者が年末調整を行う際に「調書方式」を目にするのは、令和7年分以降となります。年末残高証明書の提出有無を確認する際には、ご留意ください。

スポットワーカーは「国内雇用者」 ?

人材確保難から、スキマバイトサービス(スポットワーク仲介)を利用して、雇用者を確保している事業者もいらっしゃると思います。この場合の雇用者(スポットワーカー)は、賃上げ促進税制の「国内雇用者」に該当するのでしょうか。

スポットワーカーとは

スポットワークとは、継続した雇用関係を持たず、数時間~数日間の期日で働く、“ 単発バイト(スキマバイト)” を指し、このような形態で働く者を、スポットワーカーといいます。一般的に、求人側の事業者は、スマートフォンアプリなどを通じて、登録されているスポットワーカーとマッチングをし、雇用します。

国内雇用者とは

賃上げ促進税制を適用するには、対象となる従業員等の給与等を集計する必要があります。この対象となる従業員等を、専門用語で「国内雇用者」といいます。
この「国内雇用者」の定義は、次のとおりです。 

国内雇用者:法人又は個人事業主の使用人のうち、その法人又は個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者。パート、アルバイト、日雇い労働者を含み、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主の特殊関係者は除く。

スポットワーカーと賃金台帳

賃金台帳は、事業者が作成する法定帳簿の1つです。スポットワーカーといえども、作成は必要です。作成に必要な情報は、大抵スキマバイトサービスのシステム内に蓄積等されており、サービス会社によっては、賃金台帳が用意されています。必要に応じてデータをダウンロードするなどをして、賃金台帳の作成を行うこととなります。
つまり、スポットワーカーは、原則、賃上げ促進税制の「国内雇用者」に該当することとなります。
スポットワーカーへの給与支払は、通常、サービス会社を通じて行われます。そのため他の従業員等への支払とは別となり、給与情報も分散しがちです。国内雇用者に該当する場合に、集
計に含めるのを忘れてしまうケースが考えられます。ご注意ください。

なお、賃上げ促進税制は、令和 6年 4月 1日以後開始事業年度(個人事業主は令和7年分)から、中小企業者等又は一定の個人事業主は、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の5 年間の繰越しが可能です。赤字であっても算定を行い、必要に応じて申告の際に繰越しができるようにしましょう。

高年齢雇用継続給付

2025 年4月1日から、雇用保険の高年齢雇用継続給付の支給率が縮小されます。この給付による補てんを加味して60 歳以降の賃金の制度設計をされている場合は、会社にとっても従業員ご本人にとっても影響の大きい変更となります。制度の概要と今回の変更点をご案内します。

 高年齢雇用継続給付とは?

ここでは高年齢雇用継続給付のうち、受給されている方の多い「高年齢雇用継続基本給付金」についてご案内します。
高年齢雇用継続基本給付金は、60 歳以後の賃金が60 歳時点の賃金と比べて大きく減少している方(75%未満となっている方)に対し、その減少分の一部を補う制度です。
支給対象となるのは、次のすべてを満たす方です 。

受給資格
1. 60 歳以上65 歳未満の雇用保険の一般被保険者である
2.被保険者であった期間※が5 年以上ある
※ 雇用保険の被保険者として雇用されていた期間のすべてを指します。離職等で雇用保険の被保険者でなくなった場合でも、新たに被保険者となるまでの間が1年以内で、その間に求職者給付(基本手当等)や就業促進手当を受給していない場合には、離職前の「被保険者であった期間」が通算されます。

現行は、支給対象となる各月に支払われた賃金の最大15%の給付金が支給されます。この支給率が、今回引き下げとなります。

引き下げの対象者

今回支給率が引き下げとなるのは、次の方です。

●2025 年4月1日以降に新たに60 歳となった方で、左記の受給資格を満たす方
●2025 年4月1日以降に新たに受給資格を満たすこととなった60歳以上の方

2025 年3月31日以前に60 歳を迎え、すでに高年齢雇用継続基本給付金を受給されていた方は、現行の支給率から変更はありません。

4月以降の支給率

4月以降の支給率は、以下のとおりです。

支給率は、各月に支払われた賃金が60歳時点の賃金(60 歳に到達等する前6ヶ月間の平均賃金)と比べて、どの程度低下しているかに応じて決まります。75%以上の賃金が支払われている方は、引続き給付の対象外です。

昨今の人手不足から、60 歳以降の従業員は今後ますます重要な戦力となっていきます。これに伴い、多くの企業において、60 歳以降の賃金減額幅の見直しが進められています。今回の支給率引き下げは従業員の生活に大きな影響を与えるものです。対象となる従業員には、変更点についてしっかりと説明しておきましょう。

中小企業の価格交渉・転嫁の状況

中小企業庁では2021年9月より、毎年9月と3月を価格交渉促進月間として、価格交渉・ 価格転嫁を促進するための活動を行っています。ここでは、中小企業等における価格交渉や価格転嫁の現状と、昨年12 月に発表された価格転嫁のための検討ツールをご紹介します。

価格交渉の状況

中小企業庁が2024 年11月に発表した調査結果から、価格交渉は不要とした回答を除いた中小企業等の価格交渉の状況をみると、価格交渉が行われた割合は86.4%、行われなかった割合は13.6%でした。
受注企業から交渉を申し出た割合が60%近い状況です。反対に、発注減少や取引停止を恐れ、交渉を申し出なかった、または、発注企業からの申し出を辞退した割合が10%程度みられます。さらに、交渉に応じてもらえなかった割合も3.0%となっています。

価格転嫁の状況

次に、価格転嫁の状況(価格転嫁は不要とした回答を除く)をみると、コスト全般の価格転嫁率は49.7%で、前回調査から3.6ポイント増加しています。詳細をみると、全額転嫁できたが25.5%、7~9割が18.7%、4~6割が10.4%、1~3 割が25.4%などとなりました。全く転嫁できない割合も20%に達しています。
このように価格交渉が行われた割合は9 割近くになっているものの、価格への転嫁では、4分の1程度しか全額転嫁できない状況となっています。

価格転嫁検討ツールが登場

2024 年12月に中小企業基盤整備機構が価格転嫁検討ツールを公開しました。これは、コスト増加分を価格に反映させたい中小企業 ・小規模事業者が、商品別(取引先別)の収支状況も確認しながら、目指すべき取引価格を検討できるシミュレーションツールです。登録不要、無料で利用できます。
価格転嫁が十分にできていない企業などは、こうしたツールなどを利用しながら、価格転嫁のための資料を作成し、交渉できる環境を整えられてはいかがでしょうか。

若年労働者の定着に最も効果のある対策

新入社員を迎える季節となります。ここでは、2024 年9月に、5年ぶりに発表された調査結果※から、若年労働者の定着対策を実施している事業所における、若年労働者の定着に最も効果のある対策をみていきます。

正社員の場合

 上記調査結果から、若年正社員(以下、正社員)の定着に最も効果のある対策をまとめると、職場での意思疎通の向上が最も高くなりました。調査対象産業のうち、製造業とサービス
業(他に分類されないもの)、鉱業,採石業,砂利採取業は本人の能力・ 適性にあった配置の割合が、建設業は労働時間の短縮・ 有給休暇の積極的な取得奨励が最も高くなりました。

正社員以外の場合

同様に、正社員以外の若年労働者(以下、正社員以外)の定着に最も効果のある対策をまとめると、正社員と同様、職場での意思疎通の向上が最も高くなりました。調査対象産業のうち、鉱業,採石業,砂利採取業と製造業、情報通信業、不動産業,物品賃貸業は本人の能力・ 適性にあった配置が、建設業は仕事の成果に見合った賃金の割合が最も高い状況です。

効果のある割合が10%以上の対策を比べると、正社員は、労働時間の短縮・ 有給休暇の積極的な取得奨励が、正社員以外は仕事と家庭の両立支援が入っている以外は、同じ対策となっています。若年労働者の定着にお悩みの方は、こうした結果を参考に自社の現状を振り返ってはいかがでしょうか。

 

最後に

今月は、個人の確定申告の期限があります。また3月決算会社にとっては年度末になります。
新しい年度が始まるにあたり、4月入社などの準備などに追われる時期でもありますので、もれのないようにスケジュールを立てましょう。