ニュースレター2025年5月号
2025.04.24 ニュースレター【主な内容】
◆令和7年度に適用される定額減税
◆「医療費のお知らせ」に記載されない医療費
◆2025年度の雇用保険料率と賃金の考え方
◆世帯用借上げ社宅の賃料と従業員負担額
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令和7年度に適用される定額減税
定額減税は、所得税ならば令和 6年分、住民税ならば令和 6年度分でそれぞれ適用されるものです。ただし、一定の方の場合、令和7年度分の住民税で適用されます。この対象者などについて確認します。
定額減税とは
令和5年の経済対策に基づき、所得水準や世帯構成等に応じて給付金や定額減税が実施されることとなりました。
このうち定額減税とは、所得税や住民税を納付している合計所得金額1,805万円以下の方を対象に、納税者及びその配偶者を含めた扶養親族1人につき、次の金額を減税することをいいます。
● 所得税(令和 6 年分)3 万円
● 住民税(令和 6 年度分)1万円
この場合において、定額減税しきれないと見込まれる方へは、調整給付が行われます。具体的には、当初給付として、すでに令和5年の課税状況をベースに、減税前の税額が少なく、定額減税しきれないと見込まれた方には、その定額減税しきれないと見込まれた額(1万円単位)が市区町村から給付されています。
今後は確定した令和6年分の所得税額をベースに、当初給付に不足があると判明した場合は、追加で給付(不足額給付)が行われます。
この不足額給付は、当初給付の対象でない方が、実際に定額減税しきれなかった場合なども含まれます。
調整給付は市区町村によって対応が異なる場合があるため、詳細は納税者がお住まいの市区町村へご確認ください。
令和7年度分の住民税の定額減税
一定の方については、令和7年度分の住民税で定額減税が行われます。
(1)対象者
次のいずれにも該当する一定の納税者については、令和7年度分の住民税において定額減税の対象となります。
● 令和 6年分の合計所得金額が 1,000 万円超 1,805 万円以下である
● 同一生計配偶者※を有している
※ 令和 6 年分の合計所得金額が48 万円以下である一定の配偶者
(2)定額減税額
次の金額が、住民税(所得割額)から控除されます。金額は通知書で確認できます。
● 住民税(令和7年度分)1万円
納期について令和6年度分のような特例はなく、定額減税を適用した後の年税額を、通常の納期で納めることとなります。
なお、令和6年度分の住民税の計算と同様、上記定額減税を適用したことによる、ふるさと納税(寄附金税額控除)の上限額などへの影響はありません。
医療費のお知らせに記載されない医療費
医療費控除を適用する際に、「医療費のお知らせ(医療費通知)」を利用されている方もいると思います。この書類には記載されない医療費があるため、ご利用の際には十分ご注意ください。
医療費のお知らせ(医療費通知)
医療費控除を適用する際には、支払った医療費の領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付して提出しなければなりません。
ただし、健康保険組合や市町村などの医療保険者が「医療費のお知らせ」「医療費通知」などの名称で交付する、かかった医療費の情報が記載された書類(以下、医療費のお知らせ)について、一定の要件を満たす場合には、その「医療費のお知らせ」を添付することで「医療費控除の明細書」の作成に代えることができます。
医療機関を受診される機会が多い方ほど、領収書から「医療費控除の明細書」を作成するには大変な手間がかかることや、「医療費のお知らせ」を添付すると領収書の保存が不要となることから、「医療費のお知らせ」を利用される方もいるかと思います。
利用の際には、支払った医療費のうち記載されていないものがないか、領収書と突合したり、「医療費のお知らせ」に記載されている注意事項等を確認いただいたりすることが肝要です。
記載されない医療費
「医療費のお知らせ」は、基本的に診療の際に保険適用となるものが記載されています。そのため、保険適用とはならない、いわゆる自費扱いとなるものは記載されません。
たとえば、令和6年10月から開始した「特別の料金」の支払は、医療費控除の対象となります※が、保険適用外であるため、記載はされません。
※ 後発医薬品(ジェネリック医薬品)がある医薬品で、一部の先発医薬品の処方等又は調剤を希望した場合には、「特別の料金」を支払うこととされています(令和 6年10月以降)。
この「特別の料金」については、対象となる先発医薬品の価格の一部に相当する金額を支払うものであり、治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価として、医療費控除の対象となります。
そのため、この支払が発生した場合には、領収書の保存と、この領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作成する必要があります。
この他、協会けんぽの場合は、保険適用となる診療であっても、個人情報保護の観点から特定の診療科分について記載がされないため、これを含めるには協会けんぽへ作成依頼をする必要が生じるなど、医療保険者によって記載の対象が異なるケースがあります。
なお、マイナポータル連携で取得できる「医療費通知情報」も「医療費控除の明細書」の作成に代えることができますが、書面での「医療費のお知らせ」と記載されている情報の範囲が異なります。ご注意ください。
2025年度の雇用保険料率と賃金の考え方
2025 年度の雇用保険料率が公表されました。2025 年4月1日から2026 年3月31日まで適用されます。新しい雇用保険料率と、雇用保険料等の対象となる「賃金」について解説します。
2025年度の雇用保険料率
2025 年度の雇用保険料率は、前年度から引き下げ(従業員負担で▲0.5、会社負担で▲0.5、合計で▲1.0)となります。
雇用保険料の対象となる賃金
雇用保険料の対象となる賃金は、「労働の対償として会社が従業員に対して支払うすべてのもの」です。給与、手当、賞与、その他名称は問いません。
迷いやすい手当
● 通勤手当 ➡ 対象です
所得税が非課税であっても、雇用保険料の対象となる賃金に含まれます。
● 住宅手当や家族手当 ➡ 対象です
時間外労働等の割増賃金の計算基礎にはなりませんが、雇用保険料の対象となる賃金に含まれます。
なお、食事や社宅など「現物」で支給しているものについては、従業員が一部負担していれば、雇用保険料の対象となる賃金には含まれないのが原則です。
ただし、その負担額が実際の費用の3分の1を下回っている場合は、その差額を賃金として取り扱うことになります。
離職票等に記載する賃金
ここで「離職証明書」、いわゆる「離職票」についても触れておきます。従業員が退職して失業した時に受ける「失業手当」等の給付は、雇用保険の制度です。これらを受けるために必要となるのが「離職票」です。
この離職票には、退職前の賃金が記載されますが、この場合の賃金は、雇用保険料の対象となる賃金のうち、「臨時に支払われる賃金」と「 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」を除いたものになります。
「臨時に支払われる賃金」とは、支給されることがまれであるか、不確実であるものをいいます。また、「3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」とは、毎月の定期給与以外の賃金のうち、年間を通じての支給回数が3 回以下のもので、いわゆる「賞与」を指します。
このように、雇用保険料の対象となる賃金と、離職票に記載する賃金は、少し範囲が異なります。雇用保険料率の改定にあわせて、給与計算や離職票作成時に適正な処理がされているかどうか、確認してみるとよいでしょう。
世帯用借上げ社宅の賃料と従業員負担額
ここでは、2022年(令和4年)に人事院が行った調査結果※から、世帯用借上げ社宅を保有する民間企業における、2022年時点の世帯用借上げ社宅の賃料と従業員の負担額などをみていきます。
社宅の広さ別に賃料を確認
上記調査結果から、世帯用借上げ社宅がある企業における、2022年時点の世帯用借上げ社宅の賃料(以下、賃料)と従業員負担額(以下、負担額)の推計平均額、従業員の負担割合(以下、負担割合)を、従業員規模別(以下、規模別)にまとめると、次ページ表のとおりです。
55㎡未満
全体の規模計は賃料が85,786 円、負担額が25,326 円、負担割合は29.5%でした。
規模別にみると、賃料は500人以上が最も高く、負担額と負担割合は50人~99人が最も高くなりました。50人~99人の負担割合は30%を超えています。
東京都特別区内(以下、特別区内)の規模計は賃料が116,884 円、負担額が31,787 円、負担割合は27.2%でした。規模別にみると、賃料、負担額、負担割合はすべて、50 人~99人が最も高い状況です。
55㎡以上70㎡未満
全体の規模計は賃料が94,280円、負担額が29,208円、負担割合は31.0%でした。
規模別にみると、賃料と負担額は500人以上が、負担割合は50人~99人が最も高くなりました。
また、すべての規模で負担割合が30%を超えています。
特別区内の規模計は賃料が126,034 円、負担額が34,162円、負担割合が27.1%でした。
規模別にみると、賃料は50人~99人が、負担額と負担割合は500人以上が最も高い状況です。
70㎡以上80㎡未満
全体の規模計は賃料が102,219 円で、10 万円を超えました。負担額は32,220 円で、3万円を超えています。負担割合は31.5%です。
規模別にみると、賃料と負担額は500人以上が、負担割合は50人~99人が最も高くなりました。
55㎡以上70㎡未満と同様に、負担率がすべての規模で30%を超えています。
特別区内の規模計は賃料が133,826 円、負担額が35,954 円、負担割合が26.9%でした。
規模別にみると、賃料は50人~99人が、負担額と負担割合は500人以上が最も高い状況です。
80㎡以上
全体の規模計は賃料が111,051円、負担額が34,232 円、負担割合は30.8%でした。規模別にみると、賃料と負担額は500人以上が、負担割合は100人~499人が最も高くなりました。
また、賃料がすべての規模で10万円を超えています。
特別区内の規模計は賃料が138,151円、負担額が40,013 円、負担割合は29.0%でした。規模計の負担額が4万円を突破しました。
規模別にみると、賃料と負担額は50人~99人が、負担割合は100人~499人が最も高い状況です。
規模計を比較
規模計の賃料を全体と特別区内で比べると、特別区内は借上げ社宅の広さに関わらず10万円を超えていますが、全体では70㎡以上の広さになって10万円を超えました。賃料の差では、80㎡未満の広さでは、特別区内が全体より3万円以上高く、80㎡を超えるとその差が 3 万円を割り込みました。
負担額では、特別区内は広さに関わらず3 万円を超えていますが、全体では70㎡以上の広さになると3万円を超えています。
負担率は全体で55㎡以上の広さになると30%を超えますが、特別区内では大きさに関わらず負担率は30%未満です。
金額的には特別区内の方が賃料、負担額ともに高くなっているものの、負担割合では全体の方が高いという結果となりました。