医療機関版ニュースレター2025年5月号
2025.04.25 ニュースレター【主な内容】
◆マイナ保険証の利用率の実態は?
◆都道府県別にみる外来受療率
◆医療機関でみられる人事労務Q&A 『通勤手当を支給する際に考えておきたいルール』
◆今月の接遇ワンポイント情報『生産性を上げるには』
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マイナ保険証の利用率の実態は?
健康保険証の新規発行が終了し、マイナ保険証への移行が進んでいます。診療報酬では、医療 DX 推進体制整備加算における実績要件(以下、要件)として、マイナ保険証の利用率が求められます。マイナ保険証の利用の実態に注目します。
利用率の実績要件、4 月から引き上げ
医療 DX 推進体制整備加算は昨年 10 月より、マイナ保険証の利用率実績によって評価が 3 段階に分けられています。基準となる率は随時見直されており、この 4 月から改定となります。
少し前の調査になりますが、日本医師会の Web調査によると、2024 年 7 月時点で、利用率 10%未満の診療所が全体の 70.8%、5%未満の診療所が 44.3%でした。多くの診療所が要件を満たせておらず、算定が困難となる現実に直面していたことがうかがえる結果です。
同調査は、医療 DX の急速な推進が医療現場に大きな負担となっているとの声を受けて実施されました。日本医師会はこの結果を踏まえ、「単純に平均値で見るのではなく、分布を見て、できるだけ多くの医療機関が算定できるようにすべき」と指摘しています。加えて、「院長年齢が高い施設や小児科等で利用率がさらに低い傾向」との結果から、利用率が低迷する施設に対する一定の配慮や支援を求めました。この 4 月の要件改定では、小児科に対する配慮がなされています(表 1※1 参照)。
最近の利用状況は厚生労働省の公表資料で確認できます。これによると、昨年 12 月の健康保険証新規発行の終了を機に利用率は上昇しましたが、1月は横ばいとなりました(表 2)。
医科診療所と薬局は 20%台で、4 月の改定を控え厳しい状況にあったことが分かります(表 3)。
10 月以降の要件は、7 月を目途に検討、設定されます。最新情報にご注目ください。
都道府県別にみる外来受療率
ここでは昨年 12 月に発表された調査結果※などから、都道府県別に病院と一般診療所、歯科診療所の外来受療率をみていきます。
病院の受療率は 1,220
上記調査結果から、都道府県別に医療機関の種類別の外来受療率(推計患者数を人口 10万対であらわした数。以下、受療率)をまとめると、下表のとおりです。
全国の病院の受療率は 1,220 で、前回調査の結果である 2020 年の 1,167 より増加しました。都道府県別にみると、高知県が 2,008 で最も高くなりました。最も低い神奈川県の 942とは、2 倍以上の違いがみられます。
一般診療所の受療率は 3,614
全国の一般診療所の受療率は 3,614 で、前回の 3,435 より増加しています。
都道府県別にみると、愛知県が 4,415 で最も高く、最も低いのは沖縄県の 2,584 でした。
歯科診療所の受療率は 1,016
全国の歯科診療所の受療率は 1,016 で、前回の 1,056 より減少しました。都道府県別では、大阪府が 1,370 で最も高く、京都府が 602で最も低くなっています。隣接した府同士でも大きく異なっています。
都道府県によって医療機関の受療率には違いがみられます。貴院の所在地の状況はいかがでしょうか。
医療機関でみられる人事労務Q&A
『通勤手当を支給する際に考えておきたいルール』
Q: 当院では、職員の通勤に必要となる費用の補助として実費相当額を通勤手当として毎月支給しています。支給ルールが曖昧なため、ルールを見直そうと考えていますが、そもそも、通勤手当を支給する義務はあるのでしょうか? また支給する場合の注意点を教えてください。
A: 医院が通勤手当を支給することは、法律で義務付けられているものではありません。よって、就業規則や労働契約書などで支給の有無や、支給する際のルールを定めることになります。その際、通勤経路の考え方や、欠勤や休職した場合の取り扱いについても決めておくことが重要です。
詳細解説
1.通勤手当の支給ルール
通勤に必要となる費用を職員が負担するか、医院が負担するかは、法律で規定されていません。
住む場所をどこにするかは職員の自由であることを考えると、必ずしも医院が支給する必要はないといえます。ただし、大半の医院が支給していることを踏まえ、職員の待遇や求人への影響を考えると、支給することが望ましいのでしょう。
支給する際には、通勤手段(公共交通機関や自家用車など)や通勤経路に応じて、支給額の計算方法や支給上限額、特急券代の支給や高速道路の利用可否などを定めることが必要です。また、欠勤や休職することで実際に通勤しない場合に、通勤手当の一部または全部を不支給とするといったルールを定めておくことが必要になります。
2.通勤経路の考え方
自宅から医院まで複数の通勤経路がある場合や、普段は自転車通勤をするものの、雨天時のみ公共交通機関やマイカーで通勤するようなケースもあります。このような場合に、通勤手当の取り扱いを考えておく必要があります。通勤経路が異なる日が多少あるにしても、日常的に利用する通勤経路により通勤手当を月額固定額で支給する方法や、手間はかかるものの毎月の出勤実績や利用実績に基づき、単価×出勤日数で支給することも考えられます。
通勤手当は、引越しによる通勤経路の変更の他、交通機関の利用料金の改定、ガソリン単価の変動などによって、支給額が変更となることも想定されます。また、職員からの申請がなければ、正しい支給額を算出・把握できないこともあります。変更となるときには、期限などを設け、職員自ら申請をしてもらうような流れを決めておくとよいでしょう。
今月の接遇ワンポイント情報
『生産性を上げるには』
ワンポイントアドバイス
仕事の生産性を向上させるための時間管理術(タイムマネジメント)として、今回は 2 つのポイントを確認します。
前提として、ここでの生産性とは、インプット(投入)におけるアウトプット(産出)です。具体的には、働く時間に対する成果が生産性を図る指標である点を、まず確認しましょう。
アウトプット⇒成果、付加価値
生産性 = _______________
インプット⇒時間
ポイントの 1 つ目は、「短時間で多くの量を!」です。
繰り返す作業的要素の強い仕事は、仕上がりの質を落とさずに、短時間でたくさんの量を仕上げることです。入力、準備、片づけ等が該当します。
のんびり自分のペースで行うのではなく、限られた時間でたくさん仕上げることが求められます。
ポイントの 2 つ目は、「したいこと < すべきこと」です。
量を計ることのできない仕事は、優先順位のつけ方が医院全体の成果に大きく影響します。
優先順位づけの基準の 1 つは、自分が「したいこと」より、医院にとって「すべきこと」なのです。
「自分なりに頑張っています」ではなく、「周りの役に立つこと」を基準にできれば生産性が高くなるでしょう。