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お知らせ

医療機関版ニュースレター2025年6月号

2025.05.20 ニュースレター

医療機関版ニュースレター2025年6月号をお届けします!

【主な内容】
◆電子処方箋の普及促進と、進まない現実
◆医療機関における夏季賞与の支給状況
◆医療機関でみられる人事労務Q&A 『介護休業の対象となる家族と要介護状態の判断』
◆今月の接遇ワンポイント情報『時間の色分け①』

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電子処方箋の普及促進と、進まない現実

電子処方箋の導入補助の期限が延長されました。医療 DX 推進体制整備加算も、普及状況を踏まえ、2025 年 4 月より見直しが行われています。電子処方箋は医療 DX の重要施策の 1 つですが、その普及には苦戦しているようです。

導入補助が半年延長

電子処方箋の導入率は、2025 年 3 月 30 日時点で 29.3%※1でした。政府の当初目標は「2025年 3 月末までに概ねすべての医療機関と薬局に導入」でしたので、大きく乖離しています。
導入促進のため、医療情報化支援基金(ICT 基金)による電子処方箋の導入補助の期限が 6 ヶ月延長されました。補助要件が、「2025 年 9 月までに導入」に変更されています。
また、補正予算により、リフィル処方箋等や院内処方機能を追加した場合の補助も措置されています。

導入が進まない理由は?

日本医師会の緊急調査(2024 年秋に実施)によると、「電子処方箋を導入していない理由」の上位は次のようになっています。

■ 電子処方箋を未導入の理由(複数回答)
システムの導入や改修の費用負担が大きい 58.3%
電子処方箋を導入するメリットを感じない 52.5%
ICT に詳しいスタッフが不在・不足している 40.4%
システムの導入や改修を行う時間的余裕がない 34.1%
お薬手帳で情報を得られている 31.4%

この他、「電子処方箋に関する情報が不足している」「院内処方が中心」「HPKI カードを持っていない・申請中」「地域の薬局や医療機関で電子処方箋の導入が進んでいない」「セキュリティが不安」の回答割合が 2 割以上となりました。運用中の施設の意見は次のとおりです。

■ 電子処方箋を運用中の施設の意見(複数回答)
メリットを感じられない 46.9%
電子処方箋を導入している薬局が少ない 36.7%
処方を行う際の医師の作業が増えた 36.2%
処方に係る院内スタッフの作業が煩雑になった 21.7%

特に変化はない 9.7%

重複処方や併用禁忌などの情報が得やすくなった 17.4%
地域の薬局との連携が強化された 7.7%
処方の作業がスムーズになった 2.9%
その他 10.1%

電子処方箋導入の新たな目標は、夏を目途に見直しが行われる予定です。引き続き、制度改正や普及状況に注目していきたいと思います。

医療機関における夏季賞与の支給状況

今年も夏季賞与の支給時期を迎えます。ここでは医療機関における直近 5 年間の、夏季賞与支給労働者 1 人平均支給額(以下、1 人平均支給額)などの推移をみていきます。

病院は 30 万円超に

厚生労働省の調査結果※から、病院と一般診療所における夏季賞与の支給状況をまとめると下表のとおりです。
病院の 2024 年の結果をみると、事業所規模5~29 人はデータがありませんでした。30~99人の 1 人平均支給額は 325,637 円で、前年比54.1%の増加となりました。きまって支給する給与に対する支給割合は、直近 5 年間で初めて 1 ヶ月を超えました。
支給労働者数割合と支給事業所数割合も 2023 年より高く、すべての項目で前年を上回る結果となっています。

一般診療所も両規模で増加

一般診療所の 2024 年の結果をみると、1 人平均支給額は、5~29 人が 199,526 円で、増加が続いています。30~99 人は 202,674 円で、20 万円を超えて増加に転じました。また、どちらの規模も、きまって支給する給与に対する支給割合、支給労働者数割合、支給事業所数割合が前年より高くなっています。
2024 年に続き、2025 年も多くの産業で賃上げが実施されています。こうした状況は、今年の医療機関の夏季賞与支給にどのような影響を与えるでしょうか。

医療機関でみられる人事労務Q&A
『介護休業の対象となる家族と要介護状態の判断』

Q.
育児休業から復帰して 3 ヶ月が経つ職員から、「実は子どもに重篤な病気があり、手術を受けた後に 1 ヶ月程度自宅療養が必要と診断が出ているので休みたい」との相談がありました。

一時的に休んでも働き続けて欲しいと考えていますが、休職とすればよいのでしょうか。

A.
医院に今回のケースで休職できるような制度があれば、休職制度の利用も考えられますが、そのほかに、介護休業の制度の活用が考えられます。

介護休業は、高齢者だけでなく、病気やケガをした子どもに介護が必要な場合や障害がある場合、医療ケアを必要とする場合にも活用することができます。
また、介護休業中に医院から給与が支払われない場合、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。

詳細解説

1.介護休業制度と実務対応

介護休業とは、要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2 週間以上の期間にわたり常時介護が必要である状態)にある対象家族の介護や世話をするための休業です。
原則、日雇い職員を除くすべての職員を対象とし、対象家族 1 人につき最大 3 回まで、通算 93 日まで取得できます。なお、「対象家族」とは、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母を指します。
また、介護休業は育児休業と異なり、対象の子どもの年齢による制限はありません。そのため、医院に今回のケースで利用できる休職制度があるときは、休職を命じることも選択肢となりますが、育児・介護休業法に基づく介護休業の取得も選択肢に挙げられます。

2.常時介護が必要な状態
常時介護が必要な状態とは、文字どおり常態的に介護を必要とする状態をいいます。
介護保険制度の要介護状態区分において要介護2 以上であれば該当するほか、「座位保持」等の 12 項目について、対象家族の状態から判断されます。
2025 年 4 月 1 日に、この判断基準について、子どもに障害がある場合や医療ケアを必要とする場合等も踏まえ、見直しが行われました。

3.介護休業に対する給付金
雇用保険に加入する職員が介護休業を取得した場合で、医院から給与が支払われないのであれば、雇用保険から介護休業給付金が支給されます。
受給のためには一定要件を満たす必要がありますが、介護休業を取得した職員にとっては貴重な収入となります。

「介護」という表現からは、高齢の両親や祖父母の介護をイメージしがちですが、育児・介護休業法ではより広い範囲が想定されています。介護休業のほかにも、介護休暇など、仕事と介護の両立支援のための様々な制度が用意されていますので、状況に応じた制度を活用していきたいものです。