経営者が押さえておくべき税制情報(2025年3月のまとめ)
2025.05.15 税務情報今回は、 最新の税務情報や税制改正項目のうち、 企業経営者に重要なトピックについてご紹介します。
税制情報トピック1
所得税の103万円の壁は「160万円」に
12月の令和7年度税制改正大綱で 一旦123万円とされた「103万円の壁」への対応は、 その後の修正でさらに上乗せされ、 「160万円」まで引き上げられました。
具体的には、 令和7年から 年収200万円以下の 所得税の基礎控除が 「95万円」 になります(改正前:48万円)。 10万円引き上げられた給与所得控除「65万円」と 合わせて、課税最低限が「160万円」になります。 生活保護基準や最低賃金の水準等を 勘案したもので、恒久的な措置です。
これに加え、中所得者層を含めた税負担軽減も行われます。 具体的には、 令和7~8年の2年間に限り、 年収200万円超850万円以下の 所得税の基礎控除が「63万円~88万円」 になります(令和9年からは58万円)。
一方、「住民税の基礎控除(43万円)」に 改正はなく、所得税と大きな差がつく結果となりました。
所得税の基礎控除の改正の背景については、 次のQ&Aもご参照ください。
▼詳しくはこちらから 自由民主党「「103万円の壁」Q&A」 https://www.jimin.jp/news/information/210090.html
税制情報トピック2 令和7年度税制改正に関する法律が成立・公布
令和7年度税制改正の法律案は、 予算案と一緒にギリギリの3月の終わりに国会で 成立・公布され、4月1日から施行されています。
主な改正項目は次のとおりです。
<所得税>
・基礎控除の引上げ(48万円→最大95万円に)
・給与所得控除の引上げ(55万円→65万円に) →所得税は課税最低限が「160万円」に
・特定親族特別控除の導入など →学生バイトの103万円の壁は「150万円」に
・子育て支援の生命保険料控除、住宅ローン控除など
・確定拠出年金の拠出限度額の引上げ <資産税>
・結婚子育て資金一括贈与の贈与税非課税:2年延長
・法人版事業承継税制の役員就任要件の緩和
・先端設備の固定資産税特例:2年延長 <法人税>
・防衛特別法人税:令和7年度から導入
・中小企業の軽減税率の特例:2年延長 ただし、所得10億円超の事業年度の特例税率は17% グループ通算法人は対象外で本則税率19%に
・中小企業経営強化税制:2年延長 B類型(収益力強化設備)に建物を含む拡充措置 C類型(デジタル化設備)は廃止
・中小企業投資促進税制:2年延長 ・中小企業防災・減災投資促進税制:2年延長
・地域未来投資促進税制:3年延長 ・企業版ふるさと納税:3年延長 <消費税>
・外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し
税制情報トピック3 帝国データバンクが「全国「社長年齢」分析調査」を公表
3月26日、帝国データバンクは「全国「社長年齢」 分析調査(2024年)」を公表しました。
調査の結果、社長の平均年齢は 「60.7歳(2024年時点)」で、 34年連続で過去最高を更新しています。 また、交代した社長の就任経緯の分析では、 「同族継承」が38.6%で最も高く、 「内部昇格」が37.6%で続いています。
帝国データバンクは、 「直近では社長交代率が低水準にとどまるなかで、 今後も社長の平均年齢は上昇し続けるだろう。」と分析しています。 事業承継を検討する際の情報として、ご活用ください。
▼詳しくはこちらから 帝国データバンク「全国「社長年齢」分析調査(2024年)」 https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250325-presidentage2024/
最後に
令和7年度税制改正は、ひとまず3月末で決着しました。
しかし、今年7月には 「参議院議員選挙」が控えており、 その結果によっては「令和8年度税制改正」は さらに二転三転すると予想されます。
「103万円の壁」については160万円まで 引き上げられましたが、国民民主党が主張していた 「178万円」にはまだ届いていません。 また、もう1つ主張していた 「ガソリン税の暫定税率の廃止」もどのタイミングで廃止されるのかはハッキリしていません。
今後の動向に注目したいところです。