中小企業の節税・提案に強い税理士です。
相続税・贈与税の相談もお任せください。

℡088-855-8205
電話受付/平日 9:00~17:00

お知らせ

販売委託契約の報酬支払における源泉徴収について

2023.10.18 税務情報

商品やサービスを販売する会社が、個人の方と販売委託契約を結び、販売実績に基づいて成果報酬を支払うことがあります。このような支払いの会計処理をする際の勘定科目としては、「外注費」や「販売委託費」などを使われることが多いかと思います。
経費(損金)には違いありませんが、税務上注意すべき点がいくつかありますので、ご注意いただきたいと思います。

源泉徴収が必要な報酬は決められている

源泉徴収をすべき報酬は、下記のように定められています。

■報酬・料金等の支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲
1 原稿料や講演料など
ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
2 弁護士、公認会計士司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
3 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
4 プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
5 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
6 ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
7 プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
8 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

(国税庁HPタックスアンサーより)No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm

委託契約による報酬の支払も源泉徴収の対象

商品やサービス販売を代行する個人に対して支払う報酬も、源泉徴収の対象となります。

税務上外交員と呼んでおり、外交員に対して支払う報酬については、10.21%の源泉所得税を徴収する必要があります。外交員、というと保険会社から委託を受けて保険商品を販売する方というイメージが強いですが、保険商品の営業に限らない点、注意が必要です。

外交員の定義は、所得税法には良く記載されていないのですが、平成11年3月11日の国税不服審判所の裁決では、「外交員とは、事業主の委託を受け、継続的に事業主の商品等の購入の勧誘を行い、購入者と事業主との間の売買契約の締結を媒介する役務を自己の計算において事業主に提供し、その報酬が商品等の販売高に応じて定められている者」と解釈されてます。このようなスタイルで営業を請け負っている個人の方はかなり多いと思います。源泉徴収の義務が生じますので、要注意です。

つまり、商品やサービスの販売を個人へ委託し、その対価として支払われる報酬は、上記の外交員への報酬に該当しますので、源泉徴収が必要になります。

※謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われていても、その実態が報酬・料金等と同じであれば源泉徴収の対象になります。

※法人へ支払われる報酬については、源泉所得税の徴収・納付は必要ありません。あくまでも、個人への報酬支払が源泉徴収の対象となります。

源泉は報酬を支払う事業者が納めなければならない

報酬の支払いをする事業者が、源泉所得税の徴収義務者となります。源泉所得税は、支払いを受ける個人の所得税ですが、あくまでも支払をする事業者が、報酬の支払時に源泉所得税を差引、税務署へ納めなければなりません。

もし税務調査などにより源泉の納付漏れを指摘された場合は、支払った個人から回収できるか否かに関わらず、源泉所得税の納付をしなくてはなりません。

いくら源泉徴収するのか?

外交員に支払う報酬より源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額は、報酬・料金の額から1か月当たり12万円(同月中に給与等を支給する場合には、12万円からその月中に支払われる給与等の額を控除した残額)を差し引いた残額に10.21パーセントの税率を乗じて算出します。(注)求めた税額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。

例)<報酬・料金を20万円支払う場合>
(20万円 - 12万円)× 10.21% = 8,168円

納付期限は?

外交員等に支払った報酬・料金から源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、支払った月の翌月の10日までにe-Taxを利用して納付するか又は「報酬・料金等の所得税徴収高計算書(納付書)」を添えて最寄りの金融機関若しくは所轄の税務署の窓口で納付します。

外交員等に支払う報酬は納期特例の対象にならない

支払者が源泉所得税の納期の特例の適用を受けている場合であっても、外交員等に支払う報酬・料金については、納期の特例の対象とはなりませんのでご注意ください。

(参考:国税庁HPタックスアンサーより)
No.2804 外交員等に支払う報酬・料金
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2804.htm

源泉の納付漏れがあった場合のペナルティー

税務調査などにより源泉の納付漏れを指摘された場合は、支払った個人から回収できるか否かに関わらず、源泉所得税の納付をしなくてはなりません。その際にかかってくるペナルティーに、「延滞税」があります。

延滞税について

税金が定められた期限までに納付されない場合には、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。期限後申告書や修正申告書を提出後、または、更正や決定の処分を受けた後に納付するべき税金がある場合も同様です。※本税の額が10,000円未満の場合は端数切り捨てられ、延滞税はかかりません。

延滞税の計算方法

延滞税は、「完納すべき本税」に「延滞税の税率」と「延滞期間」をかけたものを「365日」で割り算します。延滞税は、法定納期限から2か月を超えると税率が高くなります。

<法定納期限までおよび納付期限翌日から2か月を経過する日までの延滞税>
その年度の法定税率(原則7.3%)か、「延滞税特例基準割合(※2)+1%(令和5年においては年2.4%)」のどちらか低い方を乗じて算出されます。

<2か月を経過する日の翌日以降の延滞税>
年(14.6%)か、「延滞税特例基準割合+7.3%(令和5年においては年8.7%)」のどちらか低い方を乗じて計算します。

※延滞税特例基準割合は、銀行の前年新規の短期貸出約定平均金利に年1%分を加算して算出されます。
※延滞税が1,000円未満の場合は納税義務の発生はしません。

まとめ

商品やサービス販売を代行する個人に対して支払う報酬を「外注費」等で処理し、源泉徴収がされていないケースがまま見受けられます。しかし、このようないわゆる外交員に対する報酬の支払は源泉徴収の対象であり、納付漏れがあった場合のペナルティーもあります。

源泉徴収の漏れは余計な出費をつくりだしますので、漏れがないか十分ご注意ください。